談話会報告

第78回 談話会 (2012年3月19日/グローバルCOE 第46回 若手の会談話会)

人と人をつなぐコミュニケーションロボットの実現に向けて

吉川 雄一郎 氏(大阪大学大学院基礎工学研究科・講師)

今回の若手の会では、大阪大学大学院基礎工学研究科の吉川雄一郎先生におこしいただき、「人と人をつなぐコミュニケーションロボットの実現に向けて」という演題で講演して頂いた。

吉川先生の研究の狙いは、ロボットを社会の中に組み入れることで人間同士のコミュニケーションを円滑にしようというものであった。まず吉川先生には、被験者と実験のサクラ、そしてアンドロイドのいる状況において、人間関係を説明するバランス理論というモデルが適用できるか調べた実験についてご紹介頂いた。

実験の結果、実験のサクラがアンドロイドに視線を向ける場合(アンドロイドに好意をもっている)、視線を向けない場合(アンドロイドに好意をもっていない)と比較して被験者がアンドロイドに感じる親近感が増大することを示した。ただし、実際にこの結果がバランス理論で説明できるのかについてはまだ考慮すべきことが多いとも述べられていた。

次に被験者とロボット(またはエージェント)の間での視線や瞬きの同期が、ロボットやエージェントが被験者を「見ている感」を増大させるという実験結果についてご紹介頂いた。最後に被験者の他にロボットや人間が複数人いる状況において、あるロボットのうなずきによって、実際にはうなずいていない他の人間やロボットがうなずいているかのような錯覚(うなずき混同)を被験者に引き起こすという刺激的な実験結果についてご紹介頂いた。

日本はコミュニケーションロボットの先進国と言われており、魅力的な形状や動きをするロボットが数多く作られてきた。その一方で、それらのロボットが社会の中で具体的にどのような役割を担っていけばよいのかについては、現在、多くの研究者や企業人にとってまだ試行錯誤の段階である。

吉川先生はロボットを社会の中に置くことで、人間同士のコミュニケーションを円滑にしようというスタンスを明確にしており、社会におけるロボットの影響を様々な角度から定量的な実験により調べておられる、まさにパイオニアと言うべき先生である。そのような新進気鋭の先生のご研究について今回の若手の会において詳しく聞くことができたことは大変勉強になった。報告者自身、吉川先生とは似たような興味にもとづく研究を行っており、吉川先生の今回のご講演は今後、自分が玉川で行っている研究に様々な刺激を与えてくれるものであった。

日時 2012年3月19日(月)16:30〜18:00
場所 玉川大学研究管理棟 5階502演習室
報告者 高橋 英之(脳科学研究所・グローバルCOE研究員)

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