談話会報告

第47回 談話会 (2009年6月5日/グローバルCOE 第15回 若手の会談話会)

脳とコンピュータをつなぐ
〜Brain-Computer Interfaceの現状と未来〜

加納 慎一郎 氏(東北大学大学院工学研究科電子工学専攻・助教)

本講義では、東北大学の加納慎一郎先生にご講演して頂いた。Brain-Computer InterfaceはBCIとも呼ばれ、脳活動を計測することで被験者の意図を検出し、意図通りに外部機器を操作することを目指すシステムである。体を動かさずとも、機械を操作できる技術であり、脊椎損傷などによる重篤な四肢麻痺患者や筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者などのように、残存機能が著しく限られた患者に代替コミュニケーション手段を提供するための方法などとして世界中で盛んに研究が行われている。BCIは、脳活動の計測法の違いにより、侵襲的なものと、非侵襲的なものに大きく分けられる。非侵襲的なものは、fMRIや脳波計を用いたもので、手術などの必要はない。しかしながら、非侵襲的な手法は侵襲的な手法に比べ、脳活動計測の精度は低くなってしまうという問題がある。非侵襲的な手法では、計測された脳活動からいかにして被験者の意図する情報だけを読み取れるかがカギとも言える。加納先生は、非侵襲的な手法である脳波計とNIRS(近赤外分光法)を用いて研究されており、情報を読み取るノウハウについて詳しく伺いたいと考えて、先生をお呼びした。

加納先生らは、運動をイメージすることで感覚運動野から生じる脳波の帯域強度変化を検出するBCIである“Brain Switch”というものを提案されている。そのシステムでは、1チャネルの脳波を用いて、β帯域の強度変化から運動イメージの有無を検出する。被験者が意図的に運動イメージの有無を切り替えることで、外部機器操作などのON/OFFに対応させる、という手法である。加納先生らは、計測された脳活動信号の中からターゲットとなる信号をオンラインで被験者にフィードバックする訓練実験を行った。その結果、フィードバック訓練によって脳活動信号のS/N比が向上し、運動イメージによって得られる脳活動の体部位局在性が顕著になる、という効果を示していただいた。また、加納先生は、運動イメージによるBCI以外にも、音脈分凝知覚を利用した音系列を用いた、聴覚情報に対する選択的注意を検出するBCIなどの研究も行っており、講演していただいた。先生の手法による高い信号検出精度に、会場からは驚きと、いくつもの質問が飛び出し、活発な議論が行われた。

本講演では、BCI研究に関する最新の知見を伺うことができ、また、今後のBCI研究についても議論することができた。今回のように外部から研究者をお呼びし、直接お話を伺えるような機会は得がたいものであり、このような制度があり、活用させていただけたことに感謝したい。

日時 2009年6月5日(金)17:00〜18:30
場所 玉川大学研究管理棟5階507室
報告者 大貫 泰(玉川大学工学研究科・大学院生(修士課程))

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