談話会報告

第44回 談話会 (2009年3月16日/グローバルCOE 第12回 若手の会談話会)

異種感覚マッチングにもとづく自己像認知の発達

宮崎 美智子 氏(玉川大学脳科学研究所・GCOE研究員)

第12回談話会では、2009年1月に本学へ着任したばかりの宮崎美智子氏により、「異種感覚マッチングにもとづく自己像認知の発達」と題した講演が行われた。 自己像認知とは鏡やビデオなどに映る自己像を「自分である」と認められる能力であり、目で見た像と自分の身体感覚が適合しているかどうかの認識、すなわち、視空間的情報と体性感覚情報の間の異種感覚マッチングにもとづく自他識別の側面を持つ。

本講演では、自己像における視空間的情報と体性感覚情報を系統的に操作した際、幼児の自己像に対する理解がどのように変化するのかを検討した研究が紹介された。この研究では、幼児に気づかれないようにシールや染料などを身体の一部につけ、鏡で自己像を見せた後の幼児の反応を調べるマークテストの応用課題が用いられた。すなわち、鏡の代わりにビデオカメラを用いて、ライブ(現時点)、1秒遅延(1秒前の映像)、2秒遅延(2秒前の映像)を2〜4歳児に見せ、幼児が自分につけられたマークをとるか否か、またそれ以外にどのような反応を示すかの行動観察を基に、自己映像認識の発達を調べた。

この結果、2歳児は自己映像認識が十分に発達しておらずマークをとることができなかったが、3歳、4歳はライブ映像による自己映像認識が可能であることが明らかになった。遅延については、4歳児ではライブとほぼ同様の結果であったが、3歳では1秒遅延では成績がよかったのに対し2秒遅延で大幅に成績が下降した。これは、母子間相互作用において乳幼児の行動の後ほぼ1秒以内に、母親が動作模倣などの反応を返していることに関連しているのではないかと考えられた。

また、体性感覚性の身体表象の発達過程について、鏡やビデオカメラ映像に映る自己像を、自分自身の身体感覚へマッピングする際に、視覚情報と体性感覚情報の座標変換を行わなければならないという問題を、2歳児は解決できないことが実験により明らかにされた。こうした身体表象の発達はモザイク状に進むことが予測されるが、その過程については今後の重要な研究課題となっている。

日時 2009年3月16日(月)15:00〜16:30
場所 玉川大学研究管理棟5F508室
報告者 梶川 祥世(玉川大学リベラルアーツ学部・助教)

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