NTT電気通信研究所入所以来、23年間一貫して通信用の超高速LSIの研究開発に従事した。最大の成果は交換機用の超高速メモリの開発で、製造プロセスと回路技術の両面から研究を行い、世界最高の動作速度を実現した。また、これを実現する要素技術として必要に迫られ、広い分野に研究の裾野を広げた。例えば(1)プラズマ結合型デバイスを始めとした新規半導体機能デバイスの研究、(新規トランジスタHIT発案、512ビットイメージセンサー試作)(2)ショットキーダイオード、ポリシリコンなどの半導体個別デバイスの物性研究、(3)超高速バイポーラやBiCMOS、0.2μmCMOS技術などのLSI製造プロセスの研究、(ゲート遅延20ピコ秒以下実現)と世界最高速性能実現(4)超高速バイポーラメモリ(アクセスタイム0.85ナノ秒)や超高速CMOS分周器(動作周波数4GHz)と世界最高速性能、新しい温度補償回路(原理的に温度依存なし)などの回路研究、(5)電話交換機用時間スイッチLSIアーキテクチャやキャッシュメモリ構成法の方式の研究、(6)自己シールド型プローバーの開発(0.1ピコアンペアまでシールドボックスなしで測定)など、半導体材料から個別デバイス、アーキテクチャ、測定装置まで幅広く研究を行った。
玉川大学で配属となったマイクロエレクトロニクス研究室は、新規に創設された研究室だったので、着任以来2年間をかけてLSI研究教育を行うためのCADツールの整備を行いつつ、新規なマイクロプロセッサやニューロチップのアーキテクチャ設計、アナログスタンダードセルの設計試作、電流センサー構成法、自動車用電子部品LSI化の研究を行っている。