Guest Speaker
2004年秋学期に開講している「国際理解教育」に、現在、玉川学園高等部で公民と政経を教えていらっしゃるそあい先生をお招きしました。そあい先生は、World Studiesを実践され、参加型で生徒達自身の内面も見つめ直す授業をされています。昨年度の内容やそあい先生のWorld Studiesの授業の様子なども確認しておいてください。そあい先生は、この授業の参考文献で使っている「地球市民を育む教育」の著書であるDavid Selby先生のもとで学ばれています。
当日の内容
- World Studiesについて(シラバスは授業内のみで配布)
95年からWorld Studiesは高等部で取り組まれていますが、今年(2004年)は、英語でWorld Studiesの授業を受けるという"World Studies in English"という授業を新しく実験されたそうです。目的や主旨は日本語の授業と同じですが、色々な新しいことにチャレンジすることが高等部では盛んなようです。
マジョリティ・マイノリティという言葉も、人数が多いからマジョリティ、少ないからマイノリティというのではなく、「社会的強者がマジョリティ、社会的弱者がマイノリティ」と定義され直しました。そして、World Studies を通して、生徒1人1人が「多様性の美」を感じられるようにしていくことを目指し、そのための方法としてWorld Studiesが位置づけられていることについてお話くださいました。大切なことは、「生徒自身が変わること」であって、1年間の学習を通して「自分自身を見つけること」がWorld Studiesの目的の1つでもあるのだそうです。「自分自身を見つける」ということは、生徒が自分に力をつけること(Empower)であり、その力を社会に還元するということにも繋がっていくのだそうです。生徒達の進路にもWorld Studiesは大きく影響しているそうです。
- Activity 「イメージと認識---1枚の写真から開発途上国を考える」
1枚の切り取られた写真を見て、その写真を見て考えたことを書きます。考えて答える質問は、1) 周囲はどんな状況? 2) 写真に写っている人は何をしてますか? 3) その人はどのように感じてますか? 4) なぜ、あなたは3)のように感じていると思いましたか?何かの基準をもとに判断しましたか? 5) その写真の次に起こりそうなことは何だと思いますか?なぜ、そう思いますか?の5題です。質問の答をパートナーと相談して答を書いた後、その写真のオリジナルの写真(切り取られていない)とそのキャプションを見ます。そして、何が違ったか、どうして違ったのか、自分の中に偏見はあったかと、話し合います。
どのグループも、はじめに想像して考えたことと、その写真の実際の場面との違いに驚きました。国際理解教育を受講している学生達であるので、あまり極端な想像は出てきませんでしたが、それでも発展途上国らしき様子を見ると多少はネガティブな場面を想像していることに気がつきます。高校生であると、「アジアやアフリカの子供らしい、簡素な服装をしている」となると、「貧困/飢餓→かわいそう」といった単純な構造で捉えてしまう傾向が強いそうです。なぜそうなのか、自分達の想像の原因を考えていくと、私達が触れているメディアでの取り上げ方が私達の先入観に大きな影響を与えていることが見えてくるそうです。そこで、メディアについても触れられました。
- 暴力と平和(Selby's model)
差別のつながり(イギリスの社会かモデル)
直接的な暴力と間接的な暴力について分類し、暴力の構造と平和の関係について説明くださいました。そして、私達誰もが持っている偏見が助長されていくと、どのようなことが起きていくのか「差別のつながり(The spiral of Discrimination)」について図であらわしてくださいました。「偏見はなくすことができるでしょうか?」という質問を学生にされてから、「偏見はなくすことはできないと思います。なぜならば、私達はある特定の環境に生まれ、その中で育っていくからです。だけど、自分に偏見がある!と意識して行動することができます。」と自分に偏見があることを認め、そこから多様な視点でものごとを見ていくことの大切さをお話くださいました。
- Activity「固定概念の枠」
最後に、黒い点(1cmくらい)が均等に9コ描いてある1枚の紙が配られました。「4本の繋がった直線で、ここに書かれた点を全部とおってください。」とおっしゃいました。学生達も色々と考えて線を引きますが、なかなか4本になりません。答は簡単で、点をはみ出した直線を書けば点にすべて触れることができます。また、点が大きいので必ずしも点の中心を通らなければ、3本の繋がった直線をひくこともできます。また、うんと太い線を考えて、点を塗りつぶすようにすれば、2本でも1本でもできます。紙を折って、点と点を合わせて線を引くこともできます。と、このように固定概念を捨てると、色々な方法があることに気が付くわけです。そして、何も条件を与えられていないにも関わらず、いかに私達が「点の中央を通る細い線、点で形づくられている四角からはみ出してはいけない、折ってはいけない」などと自分で枠を決めていたかに気がつきます。このような、自分では気が付かないうちに枠をつくっていること、その枠から社会やものごとを見て判断することが、偏見なのだということが実感できるアクティビティでした。
そあい先生、本当にありがとうございました。