<高等教育シリーズ106>
未来形の大学 |
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市川昭午(前・国立学校財務センター教授)
四六上製・272頁
定価 |
:2,940円(税込) |
発行年月 |
:2001年4月 |
ISBN |
:ISBN4-472-30258-6 C3037 |
ジャンル |
:高等教育 |
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ますます混迷の度が深まる日本の大学改革。近代大学の理念は失われ、「大学とはいかなるものであるべきなのか」という目的もみえずらくなってきている。大学に未来はあるのか。大学制度の実像とはいかなるものか。大学教育制度全般を俯瞰しながら、現代大学のゆくえを論ずる。本書のラストシーンに描かれた大学の姿とは……。 |
主な目次
I章 大学とは何か-機能の多様化と理念の喪失
1 組織の増殖と理念の消滅
大学は死んだ/大学は定義できるか/事(辞)典類にも定義がない
2 大学の本質
「中世大学の伝統」は皮相的/高等教育・中等後教育・第三段階教育/近代大学の理念
3 法令上の規定
学校教育法の目的規定と実態/現行法規が期待する大学の役割/機能分担と機能不全
4 大学の独自性
大学にしかできないこと/「研究と教育」の統一
5 「本当の大学」の死滅
「低級」大学と真の大学/大学の精神の衰亡/大学の独自性の消滅
II章 一般教育-知識階級の消滅と教養教育の衰亡
1 戦後大学教育の最大混乱要因
一般教養・一般教育・教養教育/理念は教養教育、実態は普通教育/教養教育の三方式
2 一般教育をどう解するか
普通教育は入学前に行うもの/一般教育概念の混乱/自由教育と普通教育
3 一般教育の成立と空洞化
高等普通教育から一般教育等へ/幻想にとどまった教養教育/大衆社会で教養教育は難しい
4 一般教育の消滅
不評だった普通教育/教養部の解体/全学無責任体制の出現
5 一般教育はどうなる
普通教育からは逃れられない/教養教育の復活は期待できない/パンとサーカス
III章 学部教育-専門教育から一般教育へ
1 学部教育とは何か
学部教育こそが中心/家計・私学依存のつけ/職業教育と教養教育
2 学部教育の量的発展
小規模共同体だった大学/大学のマンモス化/本当の大学とは?
3 大学大衆化の進展
高学歴需要の増大/大衆社会の出現と近代科学の発展/大学の質的大衆化
4 学部教育の機能不全
大衆化の加速と学力低下/学部教育の崩壊/学部教育の一般教育化
5 みえてきたネガの全体像
選抜競争の激化/みえにくい改革のグランド・デザイン/学生消費者主権の幻想
IV章 大学院教育-徒弟修業から職業訓練へ
1 新制大学院の制度化
斜陽産業のなかの成長分野/早すぎた誕生/大学院の顕在化
2 大学院急増の要因
一八歳人口の減少/大学教員たちの欲求
3 大学院拡充の根拠を問う
研究の高度化と研究者の養成/国際的寄与とリカレント教育/高度職業人の養成/教育需要は本物か
4 拡充がもたらす問題点
学部教育へのしわよせと修学年限の延長/大学内部の分極化と高等教育の階層化/大学院の量的拡大と質的低下
5 必要とされる大学全体の改革
研究機関から職業教育機関へ/学部と大学院の役割の明確化/高等教育システムの再編成
V章 管理運営-学者共和国から大学企業体へ
1 大学管理運営の変貌
教員支配の伝統/組織化された無秩序/大学を襲った二つの波
2 学問貴族たちの共和国
大学のエリート的性格 学問の親方と徒弟たち
3 学園紛争と大学の変質
大衆化大学における大衆の反乱/寡頭制から全員参加へ/根拠薄弱な全員参加論
4 民主制が招く官僚制
同僚管理から執行部支配へ/構成員から雇われ人へ/管理主義の台頭
5 大衆化の進展と信用の低下
信用から評価・監査へ/市場化と競争主義/求められる効率の再考
VI章 地域社会-「孤独と自由」から「モードII」へ
1 大学と地域の複雑な関係
思索の自由と社会からの隔離/曖昧な地域概念と大学の多様性
2 大学と地域の接近と反発
コスモポリタンとローカルズ/純粋の科学とパンのための学問/専門志向と課題志向
3 地方大学と地域社会
大学の全国配置と立地条件/地方国立大学のジレンマ/地方の大学から地域の大学へ
4 大学と地域の交流の発展
大学の貢献と地域の協力/交流の三段階/三つの交流パターン
5 地域基盤社会における大学と地域社会
地域社会が高等教育に責任をもつ時代/高等教育の普遍化と生涯学習の高度化/知識生産様式の転換/大学の融解 |
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