八丈島の菌類(1) Idriella sp., Exserticlava vasiformis, Brachiosphaera tropicalis

奥田 徹・山本耕三*・岸 登*  *田辺製薬(株)創薬研究所

  八丈島はおよそ北緯33°5’10’、東経139°45’52’、黒潮の中央に位置し 、年間降雨量が極めて多く、これまでも多くの熱帯系の菌類が八丈島から報告されている 。そこで、新規代謝産物の探索源としての熱帯系菌類を国内で採集することを目指し、興味深い菌類を得た。Idriella sp. TC 2063は、八丈町中之郷裏見滝付近の土壌から分離された。分生子形成細胞は栄養菌糸あるいは気中菌糸からほぼ直角に立ち上がり、5-16 x 2-3 mmと短い。分生子はシンポジオ型で、分生子形成細胞先端に分生子の湾曲した側を中心に向けて配列、三日月型で、先端は丸く、無色、無隔壁、7-12 x 1.5-2.0 mm。厚膜胞子は淡灰色から暗灰色、側生または端生、通常は2-4細胞が塊状となり、12-20 x 11-20 mmで、円錐状または細い円筒状の突起(長さ2-6 mm)を多数生ずる 。以上のように、Spegazzinia tessartra (Berk. & M.A. Curtis) Sacc.を思わせる厚膜胞子が特徴であり、現在新種か否かを検索中である。Exserticlava vasiformis (Mat.) Hughesは、松島(1975)のCordana vasiformis Mat.basyonymとし、Hughes1978)がExserticlava属に移した種で 、その後松島(1985)がChaetosphaeria hiugensis HinoExserticlava triseptata (Mat.) Hughesteleomorphであるとし、E. vasiformissynonymとした。我々はE. vasiformisteleomorphを、八丈島中之郷裏見滝の朽ち木上(FN 105)と奄美大島龍郷本茶峠シイタケ栽培場(BS 4847)から得たが、その子嚢胞子は細長い棍棒状、32.0-52.5 x 3.5-4.5 mmであり、松島(1985)のデータ(円筒楕円形、30-38 x 7-10 mm)と大きくかけ離れているため、現在、teleomorphの帰属する属を含め検討中である。Brachiosphaera tropicalis Nawawi TC 1563は同じく八丈町中之郷裏見滝の水の飛沫がかかる朽ち木上から分離した。分生子の形態と測定値はDescalら(1976)の記載と良い一致をした 。本菌は、Descalらによって渓流中のアワの中から得られた分生子が報告されているが、自然界での生育基質および生態は知られていない。

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Last update on 2001/07/19
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