コーネルフォト日記−20(9月14日)
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観察巣箱は木製の枠にガラスを重ねたもの.木材とガラスの間にちょっとした隙間ができます.ミツバチはこの隙間が嫌いで,埋めようとします.その材料は大きく分けて2種類あり,左側の蜂が詰めようとしているのはどろっとした植物樹脂,右側の蜂が詰めようとしているのは,できつつある新しい巣から,ちょうどかんなをかけるようにして取ってきた蜂ろうの削り屑です. |
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ミツバチはハチミツを食べて蜂ろうを合成し,それで巣を作るので,蜂ろうは巣の中にいくらでもありますが,樹脂は?,もちろん外から集めてこなければなりません.いわゆるプロポリスという場合,この樹脂のように植物起源の原料を含んでいるものを指します.ではどうやって集めて,どうやって使うのでしょう.そのあたりの調節はどうしているのでしょう.これがプロフィールにも紹介した研究テーマ「ミツバチによるプロポリス原料の採集調節」 というわけです. |
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このように,「隙間を埋める」という作業には,材料を集める採集屋,それを積み下ろす荷下ろし屋,さらにそれを隙間に詰める詰め物屋の3者が関与していることがわかりました. |
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マークする樹脂採集蜂を捕まえるために,小さなラクロスのスティックのような網と固定台を用意しました.網はバーベキュー用の竹ぐしに写真のような網を取り付けた丸くした針金を固定しただけ.網は蜂がつぶれない程度に少しゆとりを持たせてあります.台は,廃物利用でプラスチック容器の蓋を切ったものですが,縁を少し残し,ここに網の先端の針金部分が差し込めるように切り込みをつけてあります.こうすると,蜂を捕まえた状態で,片手を自由にすることができます.マークはこの網越しにペイントマーカーでつけます. |
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マークをした蜂については,巣門で,出る方(写真では左側を通過),入る方(右側)の両方の通過時刻を記録していきます.出る方は,金網とガラスの隙間が狭く,通過に少し時間がかかるようになっていて,その間にマークが確認できます.仰向けに通過するものがいるので鏡を下に置いています.右側はプラスチックの板の上を観察者(右側にいる)側に背中を向けて通るものが多くて見やすいのと,見逃しそうになったら巣門側のゲートを閉じればいいので,特に速度制限をしていません.こうして,各樹脂採集蜂(に加えて一部の花蜜・花粉採集蜂)の勤務表ができるのです.実際には採集行動にかかる時間と巣箱内での滞在時間=荷下ろしなどの時間がこれで求められるわけです. |
さて,本日の記録.合計110匹(のべ採集数),新規参加25匹.いずれも新記録です.![]() しかし,朝から8時間(いつもより1時間は短いけど数が多かった...),トイレ以外はほぼ巣門前に座りっぱなし(昼飯は食べながら).マーキングしたり記録したり,さすがに疲れました. |
研究の詳細な内容については,いずれ論文の形で紹介できるでしょう.コーネルは冬が長い分,書く時間があっていいとは,蜂のシーズンが9か月あるという西海岸から来たポスドク生.日本は? 蜂のシーズンは西海岸よりは短いけど,時間ができると仕事が増えるという「パーキンソンの法則」の支配下ですねえ. |