トレーニングコース2012 受講者の声(ラット)
2012年6月28日から30日にかけて玉川大学脳科学トレーニングコースが開催され、私は礒村宜和先生による「ラットのマルチニューロン記録と解析法」コースに参加させていただきました。ラット班には学部生から助教まで様々な知識、技術的バックグラウンドを持つ参加者が集まっていましたが、メンバーの人当たりの良さが幸いし、早い段階で打ち解けることができました。
初日は開会式の後、これから行う実験パラダイムとそれに関連する知見をレクチャーしていただきました。今回私たちは条件付けした覚醒ラットが運動を遂行する時の運動野でのマルチニューロン活動記録を見学、実習させていただけるとのことで、期待で胸が一杯でした。体験コースが始まりまず驚いたのは、オペラント学習からタスク実行中の運動野での記録に至るまでの、流れ作業のように効率的な実験スケジュールでした。その後はオペラント学習装置の実験を実際に見学することができました。1週に2匹のラットを用いて実験を行えるとのことで、その効率の良さと工夫を凝らした実験装置に圧倒されたことが強く印象に残っています。また実習としてはテトロード電極、コネクターの作成をさせていただきました。その夜は懇親会が行われ、様々な方の貴重なお話を伺うことができ、親睦を深めることができました。
2日目にはタスクを学習したラットの運動野からのマルチニューロン記録を見学しました。私は覚醒動物でのマルチニューロン活動記録を直に見学したいと思い、今回のトレーニングコースに応募したので、覚醒したラットに多点電極を刺入しそれぞれのチャンネルに複数のスパイク活動が同時に観察された時には大きな感動を覚えました。さらにその日は覚醒記録を可能にする、固定器具の埋め込み手術の様子と、記録細胞を染色、同定することができるという利点をもつ傍細胞記録の一部を見学することができました。夜にはJam sessionが行われ、医学、生物学、経済学など様々なバックグラウンドを持つ方々と議論することで、脳を理解することはどういうことなのかについて、深く考える良い機会になりました。
3日目には、実際に得られた複数ニューロンからのスパイク活動を分離する方法を学びました。実際にスパイクソーティングを行う時にはどのようなところに気をつけて行うべきかを伺うことができ、大いに参考になりました。
3日間の実習を通して、実際に研究室で使えそうな実験装置、手技を多数拝見し勉強させていただきました。また実習の合間には礒村先生による現在の研究や、学生時代や留学先での貴重なお話を伺う機会に恵まれました。先生の研究に対する思いや、信念のようなものを感じ、大いに刺激を受けました。スタッフの皆様にはお忙しい中懇切丁寧に説明をしていただき、そのお陰で実習、講義内容の理解を深めることができました。今回このような、先駆的な技術を学び、様々な方と議論する機会を与えていただいたことを、お世話になった講師の先生方、スタッフの皆様にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
(鳥取大学 米田泰輔さん)