英語でJAPAN(じゃぱん)といえば日本のことだけど,もう一つ意味があるのです.それは「うるし塗り製品」です.日本を代表する伝統的な産業の漆塗り(うるしぬり)の技術は,縄文時代前期にまでさかのぼることができるのです.そしてそれ以後の縄文時代の全ての時代にウルシ塗りの道具が作られました.下の絵は縄文時代後期から晩期にかけての,ウルシ塗りのようすです.
ウルシの原料はウルシの木にキズをつけて集めます.一本の木からは夏のあいだに20回ほどウルシがとれるそうですが,量が少ないのでたくさんの木からとります.集めたウルシは「生ウルシ」といい,このままでは使えません.かき混ぜたり濾(こ)したりして,透明でネバリ気のあるウルシにしていきます.
更にエゴマからとったアブラでウルシと「ベンガラ」という赤い染料(せんりょう=色の元)をまぜると赤いウルシに.土器のそこなどについている「スス」をまぜると黒いウルシになりました.今でもウルシを作る時にエゴマの油は欠かすことができません.縄文時代の遺跡からもエゴマの種が見つかっています.
上の絵は「赤いウルシ」をしぼっているところと,木で作った器(うつわ)や土器にウルシをぬっているところです.
ウルシは「最もすぐれた塗料(とりょう)」といわれています.ウルシがいったん固まると中の木製品(もくせいひん=木で作った様々な道具)を守ります.宮城県の多賀城遺跡(たがじょういせき)からは,ウルシがしみた平安時代の紙が土の中でくさらずに残っていました.
さて上の写真は富山県の桜町遺跡で発見された縄文時代中期の「赤漆塗り木製鉢」を掘り出しているtころです.4000年のあいだ土の中にあっても色あせることなく,そのままのすがたで残っていたことに皆おどろきました.さらに,この鉢を見た現代のウルシ職人が「我々とほとんど同じ技術で作っている」と言ったことに,人々は二度びっくりしました.
見た目も美しいウルシは美術工芸品として江戸時代からさかんにヨーロッパに輸出されました.今でも日本を代表する伝統工芸品の技術は縄文時代にほぼ出来上がっていたといわれています.